立会人署名方式による電子署名の

電子署名法2条1項1号該当性について

Adobestock

はじめに

 

新型コロナウィルスの感染拡大によりテレワーク等の普及が進んでいるところですが、契約書の押印手続がその阻害要因のひとつとして挙げられており、令和2年9月23日に行われたデジタル改革関係閣僚会議でもその旨の指摘がされています。そこで、契約書の押印に代わるものとして電子署名を採用する企業が増えてきました。電子署名自体は平成13年に制定された電子署名及び認証業務に関する法律(以下「電子署名法」といいます)により導入された制度ですが、昨今の情勢から俄然注目を浴びることとなりました。

 

 

 

電子署名とは?

 

電子署名とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、(1)当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること、(2)当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること、以上の要件を満たすものをいいます(電子署名法2条1項)。 

 

 

電子署名の要件は、(1)(2)を満たす「措置」であれば足り、いかなる措置でなければならないかについては定めていません。これは、将来における技術の変化に対応するためですが、現時点では、秘密鍵と公開鍵という暗号技術が利用されるのが一般的です。秘密鍵は本人のみが知る電子情報であり、公開鍵は本人の氏名等の情報を記載した公開された電子情報であり、それらを組み合わせることで、(1)電子書面が本人のものであること、(2)改変されていないこと、を確認する方法です。 

 

 

 

立会人署名方式による電子署名

 

もっとも、現時点で自ら秘密鍵を保有して電子署名を行うことのできる企業や個人は限られていることから、電子契約サービスを提供する事業者が契約当事者の意思を確認し、自社の秘密鍵を使って電子署名を行うという方法がとられることが一般的になっています。これを「立会人署名方式」といいます。 

 

 

 

立会人署名方式による電子署名のイメージ 

pie chart

立会人署名方式の問題点

 

ところで、立会人署名方式は電子署名法2条1項にいう「電子署名」には当たらないのではないかという問題提起があります。ここで当該措置を行ったのはあくまでサービス提供事業者であり、情報作成者ではないからだというのです。

 

 

しかしながら、そもそも契約は当事者の意思の合致によって成立するのであって、契約書はその意思を確認するための手段に過ぎません。たとえ立会人が関与したからといって、当事者の意思が明らかであれば、立会人の関与を理由に契約としての効力を否定することはありません。立会人が行う措置が当事者の指示に基づくものであり、立会人はあくまで当事者の手足となって当該措置を施しているのであれば、それを電子署名といって差し支えないはずです。

 

 

 

行政庁の解釈

 

総務省・法務省・経済産業省は、令和2年7月17日付けで「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」を公表し、このことを承認しました。以下のとおりです。

 

 

  • 電子署名法2条1項1号の「当該措置を行った者」に該当するためには、必ずしも物理的に当該措置を自ら行うことが必要となるわけではなく、例えば、物理的にはAが当該措置を行った場合であっても、Bの意思のみに基づき、Aの意思が介在することなく当該措置が行われたものと認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はBであると評価することができるものと考えられる。 

 

  • このため、利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性およびその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。 

 

  • そして、上記サービスにおいて、例えば、サービス提供事業者に対して電子文書の送信を行った利用者やその日時等の情報を付随情報として確認することができるものになっているなど、当該電子文書に付された当該情報を含めての全体を1つの措置と捉え直すことによって、電子文書について行われた当該措置が利用者の意思に基づいていることが明らかになる場合には,これらを全体として1つの措置と捉え直すことにより、「当該措置を行った者(=当該利用者)の作成に係るものであることを示すためのものであること」という要件(電子署名法2条1項1号)を満たすことになるものと考えられる。 

 

 

 

電子文書の真正な成立

 

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(電子文書)に本人による電子署名があれば、真正に成立したものと推定されます(電子署名法3条)。真正に成立したとは、電子文書に記録された契約情報が本人の意思に基づいていることをいい、それにより、特段の事情のない限り、当該情報どおりの契約が成立したものと認められます。これが電子署名の効力であり、契約書に印鑑が押印されたのと同じことになります。その際、利用者の意思に基づいていることが明らかであれば、立会人署名方式による電子署名も契約を有効とすることが認められることになります。 

 

 

 

Adobe Signの運用

 

Adobe Signは、当事者の電子証明書を付与した運用だけでなく、立会人署名方式による運用も可能です。その場合、契約書にサービス提供事業者の署名としてAdobe Signの証明書が付与され、さらに「最終監査レポート」により、利用者や署名日時等の情報を付随情報として確認することができる方式を採用しています。

 

この記事は、Adobe Signの業務/法令対応コンサルティングパートナーである、ケインズアイコンサルティンググループ監修の元に書かれております。 

 

 

電子署名の基礎知識 - 今さら聞けないアレコレ

ハンコ文化を脱して積極的にオンライン契約を取り入れたい人のために、

ハンコ代わりに使える電子サインと電子署名の違いや導入した際のメリットなどを紹介します。

ハンコ文化を終わりにしたい! オンライン契約の基礎知識

ハンコ文化を脱して積極的にオンライン契約を取り入れたい人のために、

ハンコ代わりに使える電子サインと電子署名の違いや導入した際のメリットなどを紹介します。